デトロイト総領事の眼差し
令和8年10月21日
デトロイト総領事の眼差し Vol.23
ミシガンの二都物語 ― グランドラピッズは知られざる楽園都市
ミシガンの二都物語 ― グランドラピッズは知られざる楽園都市
令和8年 (2026年) 10月21日
在デトロイト日本国総領事
デトロイトに着任して一年半あまりでオハイオ州に50回出張したと言うとミシガンの人はおしなべて嫌な顔をする。アメリカンフットボールに限らずミシガンとオハイオは何かとライバルだからだ。コロンバス、クリーブランド、シンシナティという“Big C“に加えて州全体で多様性に溢れるオハイオ州に比べ、ミシガンはデトロイト圏に人口も企業も集中している。だから州都ランシング、デンソーに代表されるバトルクリーク以外はあまり行くところがないと思っていた。しかし今年に入って3月、5月、6月、10月と立て続けにグランドラピッズに出張する機会があった。水先案内人のリック・ベーカー商工会会頭のおかげもあって、私はたちまちこの街が好きになった。在デトロイト日本国総領事
岸守 一
デトロイト(人口64万人)に次ぐミシガン第二の都市グランラピッズ(人口20万人)は、東京と大阪くらい違う。デトロイトは車の街だ。グランラピッズは家具、医療機器、ヘルスケアなどが主要産業。デトロイトの姉妹都市はTOYOTAのお膝元の豊田市だが、グランラピッズはミシガンと姉妹州県の滋賀県近江八幡市だ。デトロイト人口の7割は黒人だが、グランラピッズはオランダ、ドイツ、ポーランドなどからの移民が多い。そしてデボス家とヴァン・アンデル家の両家が政治(共に共和党)も経済も文化もスポーツも仕切っている。
「実家が酒屋でバーボンを蒸留しているんだよ」と言ってラグランド市長は初対面の時にLong Loadという自家製ウィスキーをプレゼントしてくれた。それから出張の度に夕食を共にしつつ、法の支配や日米の美意識の違いなどを題材に議論している。
日本企業は多くないが川崎重工は芝刈り機を製造している。JRオートメーションの機械の技術も素晴らしい。西ミシガン世界評議会では日本外交について講義を頼まれた。ついでに立ち寄ったマイヤー日本庭園は、クランブルック日本庭園(総領事の眼差しVol.13)よりも規模が大きく、彫刻その他の演出に凝っている(この日はChihuly展だった)。商工会年次ディナーのゲストはブッシュJr.とクリントンという元大統領コンビだった。「アメリカにも昔は言論の自由というものがあったんですよ」とウィンクしながらブッシュ大統領がトランプ政権を批判する。グランドラピッズには、こうした大らかさが強く残っていると思う。
デボス家は14年前にスタートアップ支援のためのStart Gardenを創設した。ヴァン・アンデル家は、ヘルスケアの研究員を世界中から集めたシンクタンクを運営している。
「グランドラピッズは誰でも受け入れる。治安も良いし、教育程度も高いし、デトロイトのように自動車一辺倒でもない。自分も生まれはアイオワだが今ではグランラピッズが気に入ってずっと住んでいる。日本人にももっと来てほしいね」とベーカー商工会会頭は言う。
デトロイトから車で西へ3時間。日系企業の皆さん、更なる投資を考えている方がいたら、是非グランドラピッズにも足を伸ばして見ませんか?