デトロイト総領事の眼差し
令和8年3月10日
デトロイト総領事の眼差し Vol.17
音楽のチカラ、デイトン編 ― 指揮者、原田慶太楼の挑戦
音楽のチカラ、デイトン編 ― 指揮者、原田慶太楼の挑戦
令和8年 (2026年) 3月10日
在デトロイト日本国総領事
スポーツや芸術を楽しむのには『依り代』が必要だ。在デトロイト日本国総領事
岸守 一
全く興味のないカーレースでも贔屓の選手がいれば彼を通して身近に感じることができた(眼差しVol.7を参照)。
クラシック音楽に縁がなかった。ベートーベンとショパンの区別も付かない。しかし指揮者原田慶太楼と知り合ってから音楽を身近に感じた。それでも私と音楽の関係は、利用し利用される功利的なものだ。
昨年9月にデイトン管弦楽団でデビューを飾った原田慶太楼指揮者から、本年1月30-31日に芥川也寸志をやるので聴きに来ないかと招きがあった。と言われても芥川龍之介との区別も付かない。それでも即答で引き受けたのは、もちろん慶太楼さんを応援したいという気持ちもあるが、それ以上に3つの点で有益だと感じたからだ。
先ず、昼間はデイトン開発公団主催で日本企業向けのセミナーを行い、当方主催の日本酒のレセプションでネットワークを構築するというビジネス面でのメリット。
次に、マイク・ターナー連邦下院議員(共)のレセプションと連携し、デイトン市長や地元の判事などと知り合えるという政治面でのメリット。
そして、デイトンに拠点を置くライト・パターソン空軍基地の爆撃隊長スポルディング大佐と慶太楼さんが共催したリーダーシップに関するセミナー開催という教育面でのメリット。
結局デイトン開発公団の準備不足でビジネス・セミナーと日本酒レセプションは延期になったが、1995年のデイトン合意の際にデイトン市長を務めたターナー下院議員の公邸で、たまたまワシントンDCから出張していた小野健議会担当公使と共に意見交換できたのはよかった。スポルディング大佐のリーダーシップ・セミナーには参加できなかったが、彼のお陰で長年の懸案だったライト・パターソン空軍基地訪問がこの後で実現することになる。
ウクライナ紛争が4年も続く時にロシアの作曲家ショスタコビッチを選んだ慶太楼さんの平和への思いも素晴らしいし、壇上で踊るように大きな身振りで団員一人一人と対話する慶太楼さんの指揮は(こういう表現が適切かわからないが)見ていて飽きない。音楽には、人と人を繋ぐチカラがある。ミシガンとオハイオ両州を預かる総領事として私は、そうした音楽のチカラを活かして、日本を米国中西部にもっともっと売り込みたいと思う。日本人は、日本企業は、日本的な考えそのものがミシガンでもオハイオでも大きな貢献をしているのだという事実を、音楽やスポーツや和食や日本酒のチカラを通して、地元の人々に理解し、感謝していただきたいと願っている。