デトロイト総領事の眼差し
令和7年6月17日
デトロイト総領事の眼差し Vol.7
ミシガンと言えば自動車 - なので、デトロイトではグランプリの開催
ミシガンと言えば自動車 - なので、デトロイトではグランプリの開催
令和7年 (2025年) 6月17日
在デトロイト日本国総領事
マキノー政策会議からデトロイトに戻ると、市内はレーシングカーの爆音に包まれていた。インディカーのデトロイト・グランプリの真っ最中である。在デトロイト日本国総領事
岸守 一
実は車に興味がないと告白すると、北米アステモ社クラーク社長が、せめて1度くらいはレースを見るべきだと誘ってくれた。応じたお目当ては新築のGMビルで開かれる前夜祭。アステモ本社竹内社長らと共にGMバーラ会長、ロイス社長、モリソン調達担当副社長らに会うことができた(直前まで一緒にマキノー島にいたダガン市長も戻っていた)。ミシガンにおける日本の自動車産業を守る。それがデトロイト総領事館の任務であるが、どうやって守るのか?私は総領事として14代目だが、1993年に総領事館が開設された頃は日米貿易戦争の真っ最中のため、榎初代総領事はビッグ3や議員達から引っ張りだこだったらしい。しかし今はこちらから動かないと相手にされない。日本のOEM(自動車及び部品メーカー)はGMやフォードとの取引増を望んでいる。その支援を行うためにはバーラ会長達とまず面識を得ることが必要だ。今回のレセプションは、その第一歩となり有意義だった。さらにペンスキー会長親子、旧知のデトロイト・オートショー委員長達にも会えた。犬も歩けば、棒に当たるである。
さて6月1日レース当日、アステモの観覧席で観戦させていただくことになったわけだが、デトロイト市内のコースを100周すると聞いて気が遠くなった。目の前を高速で通過するだけの車を100回も見て、いったい何が面白いのか?しかしレセプションだけ出席して、レースを見ないというのはあまりに失礼だと思い、お坊さんの読経を聞く覚悟で参加した。
レース開始前、佐々木副社長がピットの中を案内してくれた。そこでアステモ社レーサーのジョセフ・ニューガーデン選手と話す機会があった。体調を崩して予選は27車中21位と出遅れたにもかかわらず終始にこやかで、礼儀正しく、忽ちファンになった。そのおかげで1周1分3-8秒を100周するレースも短く感じたほど応援にのめり込んだ。途中で何度も事故がありレースが中断したが、ニューガーデン選手は粘り強く順位を上げ最後は9位でフィニッシュした。そのときはクラーク社長や佐々木副社長と共にガッツポーズをした。
「2年前までは佐藤琢磨選手もデトロイト・グランプリに参戦していて、息子と共に応援にのめり込みました」とJBSD川瀬事務局長が言っていた気持ちが、今ならわかる気がする。
ピットでの給油やタイヤ交換の迅速さに瞠目した。リタイヤしたチームの無念も伝わった。アステモのお陰でカーレースの素晴らしさを堪能できた。
デトロイトに着任して、どうやら私は少しずつ、車が好きになってきているらしい。







