デトロイト総領事の眼差し

令和7年12月5日
デトロイト総領事の眼差し Vol.14
初めてのMatsuri in Lansing ―『毛利元就と三本の矢』を超えていけ!


 
令和7年 (2025年) 12月5日
在デトロイト日本国総領事
岸守 一
 
戦国時代の梟雄、毛利元就が、三人の息子に激動の時代を生きるための知恵を授けたとされる逸話が、「三矢の訓」だ。三兄弟に一本ずつ矢を持たせて「一本なら折れるが三本を束ねると簡単に折れることはない。三兄弟で力を合わせて家を守るように」と諭したという。
 
デトロイト総領事館だけで達成できることは少ない。だがJBSD(商工会)、JASMSO(日米協会)、JETROシカゴ事務所が加わった『四本の矢』であればより大きな力を発揮できる。それが“The J4”と呼ばれる連携だ。そして11月12日、州都ランシングにて『九本の矢』と膨れ上がったチームジャパンは、初めてのMatsuriを成功させた。
 
元々はミシガン州議会議員に対する働きかけが目的だった。現在のミシガンで反日感情は感じられない。しかし対日理解も浅いままだ。どうすれば日本に親近感を持ってもらえる?
その答えが、『体験型日本文化紹介』だった。
多くのミシガン州民が抹茶を喫したことがあるだろう。生け花を鑑賞したり和太鼓を楽しんだこともあるかもしれない。しかし自分で抹茶を点ててお自服する機会は少ないはずだ。そう考えて、茶道、華道、書道、和太鼓の団体に協力を仰いだ。ミシガンと姉妹州県である滋賀県にもブースを出してもらった。これら5団体が、来場した11名の州議会議員だけでなく、ホイットマー州知事と二人の市長(ランシング、ファーミントンヒルズ)、ビジネスや軍の関係者などを十分にもてなしてくれた。
 
デトロイト総領事館だけで達成できることは少ない。しかし、今は“The J4”が存在する。そこにJを冠に戴く5団体が加わって、“The J9”に飛躍した。一本の矢は折れるが九本になれば折れることはない。来場した参加者は、思う存分に様々な日本文化を体験し、寿司や焼きそばや滋賀県産日本酒(七本槍)を堪能していた。
 
準備は大変だったと思う。会場を確保し、食事や飲み物を手配し、諸団体と調整し、主要な州議会議員達に個別に招待状を送る。山根首席の総括で総領事館員が一丸となって頑張ってくれた。JBSD幹部達はマンツーマンで来客対応に当たってくれた。司会はJASMSO、JETROは中川所長がビデオメッセージ。正に“The J4”の総力戦だった。ご協力いただいた5団体の底力にも改めて深く感謝申し上げる。正に“The J9”の誕生だった。私はと言えば、通常は一国の文化行事に出席しないホイットマー州知事に来ていただく努力をしただけだ。総領事ひとりだけでは何もできない。私はデトロイトに来て仲間に恵まれている幸せ者だ。
 
『九本の矢』はまだ増えるだろう。そしてMatsuriは今、始まったばかりなのだ。
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