デトロイト総領事の眼差し

令和7年12月1日
デトロイト総領事の眼差し Vol.9
クリーブランドの“C”はカルチャーの”C”:27時間の滞在で5件の文化行事



 
令和7年 (2025年) 12月1日
在デトロイト日本国総領事
岸守 一
 
在任8ヶ月でこれが19回目のオハイオ出張だというとミシガンの人たちは嫌な顔をする。管轄2州のライバル関係は、阪神ファンと巨人ファンくらいの隔たりがある。それはともかく8月21-22日にクリーブランドに出張したが、藤田名誉領事ご夫妻のお陰で文化行事三昧の滞在となった。
 
先ずクリーブランド日本庭園。入り口に赤い鳥居がある。「厳島神社じゃないんだから」と思わず突っ込みを入れたくなるような庭園にポートランドの伝説の庭師、内山貞文先生の手が入ることになる。これも藤田幹子名誉領事夫人が一人で車を3時間飛ばしデトロイトまで車を飛ばしてきてくれたお陰だが、その話はまた今度にしよう。
 
今回のメイン行事は盲目のピアニスト辻井伸行氏のクリーブランド交響楽団での演奏だ。クラシック音楽を聴かない私でも辻井伸行氏の存在は知っている。音符を読まず耳だけで音を覚えて演奏する。それなのにあれほどまでに神々しい音楽を奏でている。コンサートの後に関係者のみを招いた日本酒レセプションを主催させていただいた。辻井さんは演奏を終えてカジュアルな格好で登場し、しばし歓談されていた。友人の仲野益美氏から是非にといわれて出羽桜を勧めると美味しそうに飲んでくださった。一言でも言葉を交わした後に聴く辻井氏の私の好きな『カンパネラ』はこれまで以上に心に響く気がした。
 
翌日は藤田名誉領事に対する外務大臣感謝状式典が開催され、クリーブランドの名士達が集まった。コロンバスからクック名誉領事夫妻も駆けつけてくれた。鏡開きの後は野間大志さんのビューティフルなお寿司!あまりに素敵すぎて、翌年の天皇誕生日レセプションでお寿司を握っていただきたいとお願いし快諾いただいた(なので皆様、どうぞお楽しみに)。
 
午後の空き時間に気になっていた『ロックの殿堂(Rock & Roll Hall of Fame』を訪問した。
ミシガン州デトロイトにはモータウン博物館があり、オハイオ州クリーブランドにロックの殿堂がある。「米国中西部って、古き良きアメリカが残ってますよね」 と望月が言った。
 
夕方にクリーブランド美術館を訪問し、キュレーターのシネード・ヴィルバー氏の案内で村上隆展を回った。伝統的な日本を体現しているわけではないが、村上氏の夢殿の新解釈は興味深い。そもそも『日本的』とは、何だろう?いつの間にか、日本はこうあるべき、と決めつけている自分がいるのではないか。そんなことを考えながら、また車で3時間かけてデトロイトに戻った。
そしてクリーブランドにはまたすぐ戻ってくるだろうと予感していたのだった。

 
 
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