デトロイト総領事の眼差し

令和8年4月24日
デトロイト総領事の眼差し Vol.21
“ジミー・ポッター”、再び ― 全米陶芸市のデトロイト開催と信楽焼


 
令和8年 (2026年) 4月24日
在デトロイト日本国総領事
岸守 一
 
織部焼きの沓形茶碗に憧れて陶芸を始めたのは20代後半だから、30年以上も前のことだ。完全な円ではなく、意図的な楕円形に美を見いだす日本の価値観は世界の中で独特である。それから海外赴任の度に地元の土を使って陶芸を続けた。ジュネーブではフランス人、バンコクでタイ人、カイロではエジプト人の陶工達と作陶した。いつしか自分のニックネームに因んで”ジミー・ポッター“と呼ばれるようになった(但し、魔法は使えませんが)。
しかしニューヨークで機会に恵まれず、油絵に転向した。それ以来、風景画を描いている。陶芸のことは忘れていた。昨年7月、滋賀県信楽を訪問するまでは。
 
NHK朝ドラのスカーレット監修でも有名な高畑宏亮さん(信楽窯業技術試験場長)の案内で「狸でない」信楽を堪能したが、最も感動したのが林田鉄工の工作機械だった。陶芸の土は焼かない限り再生できるが、通常は干からびた土を砕いて水を加えて天日で干してと手間がかかる。だが林田鉄工の土練機を使えば、土と水を入れてボタンを押せば再生された土が直ぐに出てくる。それこそ陶芸家にとって「魔法の機械」だった。
 
「来年3月の全米陶芸市で信楽焼と土練機を滋賀県の特産としてアピールしたいんです。」
ミシガン州と滋賀県は“湖繋がり”で60年近く姉妹州県で、滋賀県庁からミシガン州政府に出向者を出していて、今は中嶋景子職員が出向中だ。中嶋職員のかけ声で信楽だけでなく、DAIDO (USA)CO.,LTD.長谷川社長、陶芸家の柴田夫妻など多くの人が賛同し、JBSDとミシガン大学日本研究センターの協力も得て「信楽ジャック」が始まった。
 
本年3月25-28日の全米陶芸市はデトロイト市内ハンチントンセンターで開催されたが、全米陶芸協会サタケ会長によれば7000人の参加があった。美濃市からも代表団が来ていた。私も会場で高畑場長と共に林田鉄工の土練機の土を使って轆轤を回した。実に11年ぶりのジミー・ポッターの復活だ。タイロン・カーター州議会議員も見学に来てくれた。「私の母が陶芸をしていて、自宅の地下に窯があったことを思い出したよ。」カーター議員は笑った。
デトロイト市立図書館では信楽とつながりの深い日米作家の作品の展示も行われ、私の旧い作品も展示された。ついでにJBSD事務局長の常滑の作品まで展示されていた(正にハリー・ポッターの魔法だ(^0^))。市内レストランSORAYAでの柴田夫妻の品展示販売、高畑場長のUofMやMSUでの講義など、中嶋職員の「夢」がミシガン南東部を駆け巡った一週間だった。景子さん、おめでとうございます!
 
ところで陶芸の轆轤の回転が日本と、世界の別の地域とでは、真逆だと知っていましたか?その話はまた別の機会にお話ししましょう。

 
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