生活・安全情報

子の親権問題について

近年、国際結婚が増えていますが、結婚生活で困難に直面した国籍が異なる父母の一方が子を現地の法律に反して母国に連れ去り、問題になる事案が発生しています。この問題について、留意していただききたい点をまとめました。

Q. 何が問題なのですか?

A. 米国の国内法(刑法)では、父母のいずれもが親権(監護権)を有する場合又は離婚後も子どもの親権を共同で有する場合、一方の親が他方の親の同意を得ずに子どもを連れ去る行為は、重大な犯罪(実子誘拐罪)とされています(注1)。

例えば、米国に住んでいる日本人の親が、他方の親の同意を得ないで子どもを日本に一方的に連れて帰ると、たとえ実の親であっても米国の刑法に違反することとなり、再渡航した際に犯罪被疑者として逮捕される場合があり得ますし、実際に、逮捕されたケースが発生しています。また、ICPO(国際刑事警察機構)を通じて誘拐犯として国際手配される事案も生じています。

国際結婚後に生まれた子どもを日本に連れて帰る際には、こうした事情にも注意する必要があります。具体的な事案については、家族法専門の弁護士に相談されることをお勧めします。

Q. ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)とは、どのような条約ですか?

A. 国境を越えた不法な子の連れ去りを防ぐことなどを目的として、1980年、ハーグ条約が採択されました(平成23年2月現在、締約国数は84箇国)。日本政府は、ハーグ条約の締結可能性について、できるだけ早く結論を得るべく、真剣に検討を進めています。

この条約の締約国は、他の締約国に不法に子を連れ去られたとの監護権者からの申立てを受けて、子が元々居住していた国に迅速に返還されるようにするための措置をとる義務を負います。親権をめぐる父母間の争い等は、子の返還後に、子が元々居住していた国の裁判所において決着することが想定されます。

上記のとおり、この条約は、もう一方の親の同意を得ない等不法に連れ去られた子の返還について定めるものですから、子の居住していた国の法律、手続に従って日本に連れてきた子は、この条約の対象とはなりません。

未成年の子に係る日本国旅券の発給申請について

未成年の子に係る日本国旅券の発給申請については、親権者である両親のいずれか一方の申請書裏面の「法定代理人署名」欄への署名により手続を行っています。ただし、旅券申請に際し、もう一方の親権者から子の旅券申請に同意しない旨の意思表示があらかじめ在外公館に対してなされているときは、旅券の発給は、通常、当該申請が両親の合意によるものとなったことが確認されてからとなります。その確認のため、在外公館では、通常、子の旅券申請についてあらかじめ不同意の意思表示を行っていた側の親権者に対し、同人が作成(自署)した「旅券申請同意書」(書式自由)の提出をお願いしています。

また、米国においては、父母の双方が親権を有する場合に、一方の親権者が、子を他方の親権者の同意を得ずに国外に連れ出すことは刑罰の対象となる可能性があります(各州における規定の詳細については、上記のウェブサイトを御参照ください)。実際に、居住していた国への再入国に際し、子を誘拐した犯罪被疑者として逮捕されたり、ICPO(国際刑事警察機構)を通じて国際手配される事案も生じており、当館では、在留邦人の皆様がこのような不利益を被ることを予防する観点から、子の旅券申請の際には、他方の親権者の不同意の意思表示がない場合であっても、旅券申請に関する両親権者の同意の有無を口頭にて確認させて頂いておりますので、あらかじめ御承知おきください。

家庭問題に関する相談はお早めに関係団体・機関へ

(1)国際結婚されている方の中には、外国人の相手とのコミュニケーション・ギャップや価値観の違いによるストレス、虐待など深刻な事態に直面した場合の戸惑い、外国における孤独感などから、日本に子どもを連れて帰る事例が発生しています。しかしながら、そのような行動をとったことにより、その国において犯罪者として扱われる等、国を越えたトラブルに巻き込まれ続けることにもなりかねません。

(2)また、お子さんは、夫婦両方にとってのお子さんであり、子どもにとっては、どちらも大事な親です。両親間の争いが生じた場合には、子は翻弄され、心身ともに傷つくことが珍しくなく、成長過程の子どもにとって大きな負担を与える危険性もあるといわれています。そして、国境を越えて、両親間の争いが継続する場合、子が受ける影響は更に大きなものになる場合があります。

(3)米国には、家庭内暴力(DV)等の家庭の問題に対応する相談団体・機関が多くあり、シェルター、カウンセリング、弁護士の紹介や法律相談、法的援護活動、生活困窮者に対する救済金申請支援及び、育児支援等の一連の情報提供を可能としています。また、これらの機関の中には、日本語での利用が可能な機関もあります。仮に日本語利用可能な機関が、居住されている州になくても、他州からの相談に応じたり、適当な機関の紹介が可能な場合もあります。問題の兆候が見え始めたら、お早めに各種団体・機関(注2)にご相談されることをお勧めします。

【差し迫った危機の場合】

   警察(911)
   National Domestic Violence Hotline (1-800-799-SAFE(7233)、24時間利用可能)
   (URLは、http://www.thehotline.org/。画面左上のget helpをクリックすれば、
   各州ごとのDVセンター連絡先やeメールでの連絡先にアクセスできます。)

【米司法省内のサイト】

  1. Directory of Crime Victim Services (http://ovc.ncjrs.gov/findvictimservices/
  2. Office of Violence Against Women (http://www.ovw.usdoj.gov/
  3. 州ごとのDV対策機関 (http://www.ovw.usdoj.gov/statedomestic.htm
  4. DVの定義 (http://www.ovw.usdoj.gov/domviolence.htm
    (日本と同様に、身体的な暴力のみならず、精神的なもの、性的なものも含まれます。)

【日本語利用可能な機関】

  1. Asian/Pacific Islander Domestic Violence Resource Project (http://www.dvrp.org/
    (日本語のパンフレットを用意)
  2. Asia Task Force Against Domestic Violence (http://www.atask.org/site/
    (24時間利用可能のヘルプライン(617-338-2355)。職員は日本語対応も可能)
  3. Asian Women's Shelter (http://www.sfaws.org/
  4. New York Asian Women's Center (http://www.nyawc.org/
    (24時間対応のホットライン(1-888-888-7702)は日本語可能)

【弁護士の検索:米国務省のサイトにおけるリーガルエイド紹介】

        http://travel.state.gov/abduction/incoming/legalaid/legalaid_4309.html#3


【日本におけるDV定義や支援策(配偶者からの暴力被害者支援情報)】

        http://www.gender.go.jp/e-vaw/index.html